加藤弁三郎(1899 – 1983)
京都帝国大学工学部卒業。
協和発酵工業(2008年から協和発酵キリン)の社長・会長をつとめた実業家。
歎異抄をたたえる人々13 加藤弁三郎
実業家・加藤弁三郎
加藤弁三郎は、京都帝国大学在学中、古本屋で『歎異抄』をなんとなく手に取ります。
「たんにしょう」という読み方も知らず、ページを開いてみると、
「善人なおもて往生をとぐ……」の一節が目に飛び込んできます。
値段は10銭、そのまま買います。
寮に帰って最初から読み直すと、さっぱり分からず、そのまま放置します。
その後、浄土真宗に縁があります。
就職した会社(宝酒造)の社長が浄土真宗、出向させられた協和化学工業の社長も浄土真宗。
就職した翌年にお見合いで結婚した奥さんの実家も浄土真宗でした。
やがて、終戦直後、昭和20年11月に協和発酵の社長に就任したとき、日本中大混乱の中で、何とか従業員を路頭に迷わせないようにしなければならないと、心の安定を求めて仏教を勉強し始めます。
そして『歎異抄』の教えを、一言一言、骨身にしみて感じられるようになった、と述懐しています。
私は青年の頃、宗教は科学を知らない未開の野蛮な人間の信じるもので、文明が開化し科学隆盛の時代には、何の役にも立たないものだと思っていた。
その証拠に、宗教を信じないからといって罰が当たるわけでもないし、宗教などなくても人生をエンジョイすることはできると。
しかし今になれば、それは浅はかな考えであったことに気づいている。
(加藤弁三郎)
そして、企業経営者としての生き方のバックボーンにしているといいます。
幸運にも親鸞聖人の教え、とくに『歎異抄』に出会って、その魅力にとりつかれた。
そして今では自分自身の生活、あるいは企業経営者としての生き方のバックボーンにさせていただいている。
仏教に関心のない人でも『歎異抄』を読めば、人間の愚かさに気づき、頭をたれて親鸞聖人の教えの通りに人生を渡るしかないと思えてくる。
(加藤弁三郎)
そして、このようにも言っています。
現代はまさに「火宅無常の世界」である。
そんな時代だからこそ、私は多くの人に『歎異抄』を読んでもらい、生き方のバックボーンにしてもらいたいと思う。
(加藤弁三郎)