倉田百三(1891 – 1943)
写真はWikipediaより
親鸞聖人と歎異抄の著者といわれる弟子唯円を描いた『出家とその弟子』の著者。発表と同時に当時の青年たちに熱狂的に支持され、大ベストセラーとなりました。世界各国で翻訳され、フランスのノーベル賞作家ロマン・ロランも絶賛しています。
歎異抄をたたえる人々5 倉田百三
作家・倉田百三
『歎異鈔』の「悪をも恐るべからず、弥陀の本願をさまたぐるほどの悪なきが故に」
これは恐ろしい表現である。
世界のどの経典にこんな恐ろしい、大胆な表現があるか。
ニーチェでも、トルストイでも、ボードレールでも、これを読んだら驚くだろう。
トルストイの如きは、82歳の家出後において死なずにこれを読んだら、更に転心して念仏に帰しはしなかったであろうか。
(倉田百三『法然と親鸞の信仰』)
また、このようにも言っています。
『歎異抄』よりも求心的な書物は、おそらく世界にあるまい。
この書には、また、もの柔らかな調子ではあるが、
恐ろしい、大胆な、真剣な思想が盛ってある。
見方では毒薬とも、阿片とも、利刃ともとれる。
そしてどこまでも敬けんな、謙虚な、しかし真理のためには何ものをも恐れない態度で書かれているのである。
文章も日本文としては実に名文だ。
国宝と言っていい。
(倉田百三『法然と親鸞の信仰』)
さらにはこのように、世界第一とまで言っています。
歎異抄は、私の知って居る限り、世界のあらゆる文書の中で、一番内面的な、求心的な、そして本質的なものである。
文學や、宗教の領域の中、宗教の中でも最も内面的な仏教、その中でも最も求心的な浄土真宗の一番本質的な精髄ばかりを取り扱ったものである。
中略
歎異抄という著作は反之、その志向が内界完成にあるので、徹頭徹尾求心的なものである。
その方面での、典型的なものとして、世界第一の文書である。
(倉田百三『一枚起請文・歎異抄』)